近年、多様性(ダイバーシティ)への理解が重視されるようになり、幼児期から多様性を学ぶ教育についても関心が高まっています。ここでは、幼児や子どもが多文化、多様性に触れる教育を受けることの意義をご紹介します。

多様性(ダイバーシティ)の重要性

社会にとって多様性がなぜ重要なのかについては、「一人ひとりが生きやすい社会にする」「集団としてのパフォーマンスを高める」「社会をより強固にする」などが理由として挙げられます。SDGsにおいても、多様性は直接の目標にはなっていないものの重視されています 。

2021年の日本財団の調査では、「日本社会には、社会的マイノリティへの偏見や差別がある」とする回答が85.9%であり、割合としては減少傾向にあるものの、多様性に関して日本社会はいまだ課題を抱えていると言えます。

では、社会に生きる個人にとっては、なぜ多様性への理解が重要なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

他者と共存してよりよく生きるため

多様性への理解は、これからの時代に他者と共存し、よりよく生きるために重要です。近年、グローバル化や価値観の多様化が進んでおり、今後も一層その流れは強まると考えられています。

そうした中、自分とは異なるさまざまな属性や考え方を持つ他者と共に生活し、コミュニケーションを取り、共に活動できるかが、普段の生活や学校、ビジネスの場で従来よりも問われます。

他者との共存は、一人ひとりがこれから先の社会で選択肢を広げ、暮らしていくためにも大切です。

多角的な視座を持つため

多様性を理解すると、もともとの自分にはなかった考えなどを取り入れ、多角的な視座を獲得できます。前述の通り、世界のグローバル化や価値観の多様化は進んでおり、また世界の先行きはますます不透明さを増しています。

そうした世界では、これまでに答えのない課題にさまざまな視点を持ちながら取り組まなければならないでしょう。これからの世界でそのときどきに生じる課題をよりよく解決しながら生きていくために、多角的な視座と、その基礎となる多様性の理解は重要と言えます。

自分自身のよさや可能性を知るため

多様性の理解というと、他者の多様性を理解する側面が強調されがちですが、自分自身の良さや可能性を知るうえでも、多様性の理解は重要です。

社会的に注目されるマイノリティの問題を自分事として捉えない人もいるかもしれません。しかし、人はその人が属する社会、組織、集団などでは、性別、年齢、出身、経験、考え方といった何らかの要素により、しばしばマイノリティになります。

そうした中、多数者による「普通」の圧力に押し潰されず、多様性の中に自分自身を位置づけることは、自分ならではの良さや可能性の発見につながります。もちろん、社会で生きていく上では妥協はつきものですが、他者や社会と折り合いをつけながらも、より自分らしく生きていくために多様性の理解は役立ちます。

幼児期に多様性(ダイバーシティ)に触れる教育を受ける意義

多様性を学ぶことは人生のあらゆる段階で重要です。その中で、特に幼児期に多様性に触れる教育を受ける意義とは何でしょうか。

幼児期から多様な他者と生きていく準備ができる

子どもは幼児期から多様な他者と出会います。たとえば、保育施設の他の子どもや先生のなかには、海外をルーツとしていたり、障がいのある人などもいるでしょう。あるいは、自身がそうかもしれません。

幼児期から多様な他者との出会いは始まっていると言えます。その最初の段階から自分とは違う他者とよりよく生きていくために、多様性に触れる教育は重要です。

偏見や拒絶が生じやすい時期に多様性を受け入れやすくする

幼児期に多様性に触れる教育を受ける意義の1つは、偏見や拒絶が生じやすい時期に適切な教育を受けることで、多様性を受け入れやすくすることです。

欧米の研究では、子どもは2歳までに性や人種、障害について違いを認識し、4~5歳までに人種的な事柄や障がいに対して不快や拒絶をするとされています。それを踏まえ、日本の研究では、子どもが他の子どもに対して感じる違いが、他の子どもに対する不快や拒絶、偏見に結びつくことが懸念されています。 放置しておくと偏見や拒絶が生じやすい幼児期に、多様性について適切な教育を受けることは、子どものその後の成長においても重要と言えます。